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香港と中国本土:拡大を目指す企業が知っておくべき主な税制の違い

📋 ポイント早見

  • ポイント1:課税原則の根本的違い: 香港は「源泉地主義」(香港源泉所得のみ課税)、中国本土は「全世界所得課税主義」(居住者企業の全世界所得を課税)。
  • ポイント2:消費税の有無: 香港には付加価値税(VAT)や消費税がありません。一方、中国本土では複数の税率(主に6%、9%、13%)からなるVAT制度が運用されています。
  • ポイント3:源泉徴収税率の差: 香港から非居住者への配当・利子の源泉徴収税は0%です。中国本土から香港への支払いは、租税条約(DTA)適用で配当が5%に軽減される可能性があります。

香港での事業が順調に拡大し、広大な中国本土市場への進出を検討されている方も多いでしょう。しかし、その前に一つの重要な問いが生じます。全く異なる税務の世界に備える準備はできていますか?政治的には一体であるものの、香港と中国本土は根本的に異なる税制の下で運営されています。この違いを理解し、乗り越えることは、単なるコンプライアンスの問題ではなく、越境事業の収益性、運営効率、長期的な成功を決定づける戦略上の必須事項です。

1. 法人税:源泉地主義 vs. 全世界所得課税主義

両地域の税制の哲学的核心は、どの所得が課税対象となるかにあります。香港は厳格な源泉地主義(『税務条例』第112章)を採用しています。これは、香港で生じ、または香港から得られた利益のみが課税対象となることを意味します。海外源泉の利益は、原則として香港では非課税です。対照的に、中国本土は居住者企業に対して全世界所得課税を行います。中国に登録された企業体は、国内で得たか国外で得たかを問わず、すべての利益に対して法人所得税(CIT)の納税義務を負います。

項目 香港 中国本土
課税原則 源泉地主義 全世界所得課税(居住者企業)
標準法人税率 16.5% (二段階制:最初の200万香港ドルは8.25%) 25%
消費税 / VAT なし 6%、9%、13%
配当源泉徴収税率 0% 10% (DTA適用で5%に軽減可能)

「恒久的施設(PE)」のリスク

よくある落とし穴は、香港会社が中国本土で自由に事業を行っても、そこに納税義務が生じないと想定してしまうことです。中国本土の税務当局は、貴社の事業活動を「恒久的施設(PE)」とみなすことができ、そのPEに帰属する利益に対して香港法人に中国での納税義務を課す可能性があります。その定義は広範で、進化し続けています。

⚠️ 重要な注意: PEは単なる物理的なオフィスだけではありません。中国本土の規則およびOECDの影響を受けた日中租税条約(DTA)の下では、事業の固定場所、契約権限を有する従属代理人、または一定期間(多くの場合12ヶ月間で183日)国内で行われる特定の役務提供活動によっても引き起こされる可能性があります。従業員の頻繁な出張、本土市場を対象とした持続的なデジタルマーケティング、サーバーインフラの維持などは、すべて当局の審査の対象となる可能性があります。

2. VATの有無:根本的な運営上の違い

香港の最も重要な優位性の一つは、消費税、付加価値税(VAT)、物品サービス税(GST)が一切存在しないことです。これは価格設定、請求書発行、会計処理を非常に簡素化します。一方、中国本土には複数の税率(主に13%、9%、6%)からなる包括的なVAT制度があります。企業はVAT登録を行い、特別なVAT請求書(発票)を発行し、定期的に申告書を提出し、仕入VATの控除や輸出還付に関する複雑な規則を理解する必要があります。これは、香港には存在しない主要なコンプライアンス層を意味します。

📊 具体例: 中国本土の顧客にサブスクリプションを販売する香港のソフトウェア会社の場合、香港法人にはVAT義務はありません。同じ会社が上海に外商独資企業(WFOE)を設立してその販売を行う場合、そのWFOEは顧客に対して(ソフトウェアサービスに対して)6%のVATを課金し、VAT申告書を提出し、中国での自社の事業経費に対して支払ったVATの控除を請求する可能性があります。

3. 源泉徴収税と日中租税条約(DTA)

越境支払いは、条約に基づく計画が極めて重要となる場面です。香港は一般的に、非居住者への配当および利子の支払いに対して源泉徴収税を課しません(0%)。中国本土は通常、そのような支払いに対して10%の税率で源泉徴収を行います。幸いなことに、中国本土・香港間の租税条約(DTA)は軽減措置を提供しています。配当については、香港の受取会社が本土の支払会社の資本の少なくとも25%を直接保有している場合、源泉徴収税率を5%に軽減することができます。

💡 専門家のヒント: DTAの恩典を受けるためには、香港法人がその所得の「受益所有者」であり、一定の実体要件を満たしている必要があります。単にペーパーカンパニーを通じて支払いを迂回させるだけでは資格を得られません。香港法人は、両地域の税務当局を満足させるために、十分なスタッフ、事業所、意思決定能力を備えているべきです。

4. インセンティブと特別区域:戦略的機会

両地域とも税制優遇を提供していますが、その性質は異なります。香港の優遇措置は一般的に広範で安定しており、二段階利得税率や研究開発費の特別控除(適格経費の最大300%)などが挙げられます。中国本土の優遇措置は、対象が限定され、地域に特化し、変更される可能性が高い傾向にあります。例としては、全国的に認定されたハイテク企業に対する15%の法人税率、または前海(深圳)、横琴(珠海)、海南自由貿易港などの特別区域での優遇政策があります。

⚠️ 重要な注意: 中国本土の優遇措置には、厳格な条件、申請手続き、継続的なコンプライアンス要件が伴うことが頻繁にあります。また、政策の優先順位が変化するにつれて、改正または撤回される可能性もあります。長期的な計画のためにこれらに依存するには、積極的な管理と代替計画の策定が必要です。

5. コンプライアンス文化:柔軟性 vs. 形式主義

税務コンプライアンスの行政的経験は大きく異なります。コモン・ローに根ざした香港の制度では、事実と状況に基づいて税務局(IRD)と解釈や議論を行う余地があります。文書化が鍵ですが、専門家の判断の余地があります。

中国本土の制度はより形式主義的で、デジタル化が進んでいます。「金税システム」第4期は、ビッグデータとAIを活用して、請求書、税務申告、銀行取引をリアルタイムで照合します。仕入控除を請求するためには、VAT請求書(発票)の厳密な一致が義務付けられています。公表された規則と手順への正確な遵守が重視されています。

📊 具体例: 事業経費の控除について。香港では、顧客接待費を領収書と事業目的の説明で立証するかもしれません。中国本土では、ほぼすべての購入に対して特定の発票が必要であり、控除可能な接待交際費のカテゴリーは厳密に定義され、売上高の一定割合に制限されています。

まとめ

  • 源泉に基づく事業構造: 地域統括本部、持株会社、本土以外の所得については香港を活用しましょう。現地事業(例:WFOE)はPEリスクとVATコンプライアンスを管理するために使用します。
  • 源泉徴収税を計画に織り込む: 中国本土からの配当に対する5-10%の源泉徴収税をキャッシュフロー計画に考慮してください。香港法人が5%のDTA税率を適用するための実体を備えていることを確認しましょう。
  • VAT制度を尊重する: 中国本土のVATコンプライアンスに伴う管理コストを予算に組み込みましょう。これは単なる税金ではなく、根本的な運営上の違いです。
  • 現地の専門知識を求める: 中国本土の形式的でデジタル化された税制を乗り切るには、現地の会計・法律アドバイスが必要です。香港の慣行が適用されると想定しないでください。
  • すべてを文書化する: 香港と本土の事業体間の利益配分を両地域の当局に正当化するためには、堅牢な移転価格文書が極めて重要です。

香港と中国本土の税制は、単に税率が異なるだけでなく、その根本的な仕組み(DNA)が異なります。成功する事業拡大は、どちらかを選ぶことではなく、両方の制度を尊重する事業構造を設計することにかかっています。源泉地主義と全世界所得課税主義の違いを理解し、VATの環境に備え、DTAを戦略的に活用することで、複雑なコンプライアンスの課題を、越境事業における競争優位の源へと変えることができます。

📚 参考資料

本記事の内容は、香港政府の公式資料および信頼できる情報源に基づいて作成されています:

最終更新:2024年12月 | 本記事の情報は一般的な参考情報であり、具体的な問題については資格を持つ税務専門家にご相談ください。

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