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香港の不動産税における課税評価額の計算方法

📋 ポイント早見

  • ポイント1: 香港の不動産税(物業税)は、純賃貸収入(Net Assessable Value, NAV)の15%が税率です。
  • ポイント2: NAVの計算は、総賃貸収入から「差餉(政府の固定資産税)」と「修繕・経費のための法定控除(20%)」を差し引いて算出します。
  • ポイント3: 申告と納税には厳格な期限があり、特に税額に異議がある場合は、納税通知書発行日から1ヶ月以内に書面で申し立てる必要があります。

香港で不動産を所有し、賃貸収入を得ている方にとって、正確な税額計算は必須スキルです。その中心となるのが「純賃貸収入(Net Assessable Value, NAV)」の算出です。NAVは単なる総家賃収入ではなく、香港の税法に基づいて特定の控除を適用した後の「課税対象となる純収入」を指します。この記事では、2024-2025年度の税制に基づき、住宅・商業物件別のNAV計算方法、よくある間違い、申告の流れまでを、具体例を交えて分かりやすく解説します。

純賃貸収入(NAV)の基本を理解する

香港の不動産税(物業税)は、物件から得られる賃貸収入に対して課税されます。しかし、課税のベースとなるのは総収入そのものではなく、「純賃貸収入(Net Assessable Value, NAV)」です。NAVは、年間の総賃貸収入から、税法で認められた控除額を差し引いて計算される課税対象額です。このNAVに、2024-2025年度現在の標準税率である15%を乗じることで、納付すべき不動産税額が決定します。

つまり、NAVを正確に計算することは、適正な納税額を把握し、過不足なく申告するための第一歩となります。計算のプロセスは、主に「年間賃貸収入の確定」と「法定控除の適用」の2段階で構成されています。

年間賃貸収入の確定方法

NAV計算の出発点は、課税年度(4月1日~翌年3月31日)における物件からの総収入を正確に把握することです。これは単に毎月の基本家賃の合計だけでなく、以下のような収入も含めて考慮する必要があります。

  • 基本家賃: 契約に基づく月額または年額の賃料。
  • 管理費・共益費: 大家が提供するサービス(清掃、警備、管理)に対するテナントからの支払いで、家賃の一部として受け取る場合。ただし、大家が単にコストを回収するだけで利益を上乗せしていない明確な「サービスチャージ」は、条件により課税対象外となる可能性があります。
  • 家具付き物件の家賃: 家具の使用料が家賃に含まれている場合、その全額が課税対象収入となります。
⚠️ 重要な注意: 「フリーレント(無料賃貸期間)」は、実質的な年間収入を減らす要素です。例えば、1年間の契約で2ヶ月のフリーレントがある場合、NAV計算に使う年間収入は、10ヶ月分の家賃を基に算出する必要があります。

法定控除額:NAVを減らせる経費

総収入が確定したら、次に香港税法で認められている控除を適用します。主な控除は以下の2つです。

1. 差餉(政府の固定資産税)

差餉は通常テナントが負担しますが、契約上大家が支払う場合に限り、その支払額をNAV計算から控除できます。政府から差餉の還付(リベート)があった場合は、還付後の正味支払額を控除します。

2. 修繕・経費のための法定控除(20%)

これは大家にとって最も重要な控除です。実際の経費の領収書を提出する必要なく、差餉控除後の残額の20%を自動的に控除できます。この控除は、日常的な修繕費、保険料、管理費などの雑費をカバーすることを目的としています。

💡 専門家のヒント: この20%控除は「法定控除」であり、実際に20%分の経費がかかっていなくても適用できます。逆に、大規模な増改築など資産価値を高める「資本的支出」は、この控除の対象外であり、NAV計算では経費として認められません。

ステップ・バイ・ステップNAV計算式と具体例

香港税務局(IRD)が定めるNAVの計算式は、以下の通り体系的です。

  1. ステップ1: 年間総賃貸収入を確定する。
  2. ステップ2: 大家が支払った差餉(還付後)を差し引く。
  3. ステップ3: 上記差引後の金額に対し、20%の法定控除を適用する。

具体例で見てみましょう。年間家賃収入が240,000香港ドル、大家が支払った差餉(還付後)が9,000香港ドルの場合です。

計算項目 金額(香港ドル)
年間総賃貸収入 240,000
差し引く:大家支払い差餉(還付後) – 9,000
20%控除の対象額 231,000
差し引く:法定20%控除 (231,000 x 20%) – 46,200
純賃貸収入(NAV) 184,800
納付すべき不動産税 (NAV x 15%) 27,720

住宅物件 vs 商業物件:NAV計算の違い

NAV計算の基本原則は共通ですが、物件の種類によって考慮すべき点が異なります。

収入項目 住宅物件(家具付き) 商業物件
スペースの基本家賃 課税対象 課税対象
家具・備品の使用料 通常、家賃の一部として課税対象 該当しない場合が多い
明確なサービス料(コスト回収のみ) 該当しない場合が多い 利益が上乗せされていなければ、課税対象外の可能性あり

シェアオフィスのような複合サービスを含む契約では、家賃部分とサービス部分を適切に按分することが正確なNAV計算の鍵となります。按分された「物件の使用権」に対応する部分のみが不動産税の課税対象です。

申告・納税の期限と異議申し立て

NAVを計算した後は、税務局への申告と納税が求められます。香港の不動産税は「暫定税」制度を採用しており、前年度の実績に基づいて当年分の税額が暫定で計算され、年2回に分けて納付します。

アクション 主要な期限・タイミング
年間税務申告書の提出 課税年度終了後、通常5月31日まで(延長可能)
暫定税 第1回納付期限 通常、年末(例:11月/12月)
暫定税 第2回納付期限 通常、翌年春(例:4月/5月)、前年度の最終税額と合わせて
納税通知書への異議申し立て 通知書記載日から厳密に1ヶ月以内
⚠️ 重要な注意: 税務局から送付される「納税通知書(Assessment Notice)」の内容に誤りがある場合、通知書に記載された日付から1ヶ月以内に書面で異議を申し立てる必要があります。この期限を過ぎると、通知内容が確定し、後の異議申し立てが非常に困難になります。

まとめ

  • 香港の不動産税は、純賃貸収入(NAV)の15%です(2024-2025年度)。
  • NAVは、総賃貸収入 - 大家支払い差餉 -(差引後残額×20%)の式で計算します。
  • 大規模改修などの「資本的支出」は控除できず、収入と経費の明確な記録を7年間保存する義務があります。
  • 申告と納税には厳格な期限があり、税額に異議がある場合は納税通知書到着後1ヶ月以内の対応が必須です。

香港の不動産税計算は、ルールを理解すればシステマティックです。しかし、複雑な賃貸契約や商業物件、外国為替での収入など、個別の事情により計算が複雑化する場合もあります。正確な申告とリスク管理のためには、契約書や領収書の整理を習慣づけ、不明点は香港税務局の公式ガイドラインで確認するか、資格を持つ税務専門家に相談されることをお勧めします。

📚 参考資料

本記事の内容は、香港政府の公式資料および信頼できる情報源に基づいて作成されています:

最終更新:2024年12月 | 本記事の情報は一般的な参考情報であり、具体的な問題については資格を持つ税務専門家にご相談ください。

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