見落としがちな経費:香港企業が活用すべき税額控除
📋 ポイント早見
- 事業所得税(利得税)税率: 法人の場合、最初の200万香港ドルは8.25%、それを超える部分は16.5%です。
- 控除の基本ルール: 経費は「完全かつ排他的に」事業目的で発生したものでなければなりません(《税務条例》第16(1)条)。
- 研究開発(R&D)控除: 適格なR&D支出に対し、最大300%の税額控除が適用可能です(《税務条例》第16B条)。
- 記録保存義務: すべての控除請求を裏付ける記録を7年間保存する必要があります。
香港の低くシンプルな税制は、企業にとって大きな魅力です。しかし、そのシンプルさは時に誤解を招くことがあります。見かけの税率の裏には、何を控除できるか、できないかを規定する詳細なルールが存在します。あなたの会社は正当な経費をすべて申告し、適切な節税を行えているでしょうか?それとも、知らず知らずのうちに過剰な事業所得税を支払っているでしょうか?控除可能な経費のニュアンスを理解することは、抜け穴を探すことではなく、《税務条例》に基づく正確なコンプライアンスです。本ガイドでは、香港の事業所得控除において最も見落とされ、誤解されやすい分野を解説します。
「完全かつ排他的に」の原則:正確さがすべて
控除の基本原則は《税務条例》第16(1)条にあります。経費が課税対象となる利益の獲得のために「完全かつ排他的に」発生した場合にのみ、控除が認められます。香港税務局(IRD)はこの表現を厳格に解釈します。わずかでも個人的な利益の要素が含まれる経費は、一部または全部が認められないリスクがあります。
取引先接待費:典型的な論争の的
ビジネスランチ、企業ギフト、イベント接待は香港では一般的です。しかし、IRDはこれらの請求を頻繁に精査します。控除を成功させる鍵は、その経費を契約交渉や売り上げの確保といった具体的な事業目的に直接結びつける、反論の余地のない証拠を残すことです。
在宅勤務とリモートワークのジレンマ
香港には、他の国のように個人や企業向けの法定の「在宅勤務控除」制度はありません。会社は通常、従業員の個人の家賃や光熱費の一部を控除することはできません。しかし、戦略的な考え方で結果を出すことが可能です。
資本的支出と収益的支出:重要な区別
これは最も一般的で、コストのかかる誤りの一つです。資本的支出(例:不動産の購入、会社用車両、主要なソフトウェアの開発)は、一般的に控除できません。これは事業のための資産を生み出します。収益的支出(例:家賃、給与、光熱費、修理費)は事業の日々の運営で発生し、全額控除可能です。特にテクノロジー関連では、その境界線が曖昧になることがあります。
| 経費の種類 | 一般的な分類 | 主な考慮点 |
|---|---|---|
| ソフトウェアライセンスの購入(永続的) | 資本的支出 | 永続的な資産を創出。減価償却控除の対象となる可能性あり。 |
| 月額SaaSサブスクリプション料金 | 収益的支出 | 永続的な資産を生まない定期的な運営コスト。 |
| 大規模なオフィス改修 | 資本的支出 | 資産を改良するもの。資本的性質。 |
| 壁の塗り直しや漏水修理 | 収益的支出 | 既存の資産を維持するもの。 |
R&D控除の宝庫:第16B条を見逃さないで
香港の研究開発(R&D)支出に対する強化された税額控除は、強力ですが十分に活用されていないツールです。《税務条例》第16B条に基づき、事業が負担した適格なR&D支出の最初の200万香港ドルは300%の控除対象となります。それを超える金額は200%の控除対象です。これは自社内および外部委託のR&Dの両方に適用されます。
多くの企業は、R&Dがバイオテックやエンジニアリング企業だけのものだと誤解しています。IRDの定義はより広く、新しい、または大幅に改良された材料、装置、製品、プロセス、サービスを創出する目的で科学的・技術的進歩を達成しようとする活動を含みます。
- プロセス革新: 物流や在庫管理を最適化する新しいアルゴリズムの開発。
- 設計・開発: 技術的に進歩した新しい製品デザインやプロトタイプの作成。
- 食品科学: 特定の栄養価や保存性を持つ新食品の体系的な試験・開発。
越境事業と経費の按分
香港以外で事業を行う企業にとって、源泉地主義(Territorial Source Principle)は重要です。香港源泉の利益の獲得に関連する経費のみを控除できます。ある経費が香港と海外の事業の両方に利益をもたらす場合、合理的かつ正当な按分を行わなければなりません。
タイミングと発生主義:適切な年度での控除請求
香港の税金は発生主義に基づいて計算されます。これは、経費が支払われた年ではなく、発生した年に控除を請求することを意味します。これは戦略的な機会を生み出す一方で、落とし穴にもなります。
✅ まとめ
- すべてを記録する: 特に接待、出張、R&Dなどの非日常的な経費については、事業目的、参加者、結果を明示した同時期の記録を維持しましょう。
- 資本的支出と収益的支出を理解する: 資本的支出を収益的支出と誤分類することは、監査のきっかけとなる一般的なミスです。疑問がある場合は、申告前にアドバイスを求めましょう。
- R&Dの可能性を探る: 自社の革新活動を見直してみてください。気づかずに適格なR&Dを行い、大幅な節税機会を逃しているかもしれません。
- 公平に按分する: 香港と海外の両方に利益をもたらす経費については、一貫性のある合理的な按分方法を確立し、文書化しましょう。
- タイミングに注意する: 発生主義を活用し、未払いであっても課税年度に関連する控除可能な経費が適切に計上されるようにしましょう。
香港の競争環境において、効果的な税務管理は利益に直接貢献します。これは攻撃的な回避策ではなく、細心の注意を払った法令遵守と、法律の下で正当に権利があるものを請求することです。資格を持つ税務アドバイザーと共に、経費ポリシーと請求内容を事前に見直すことで、税務ポジションを最適化し、節約した資金を事業成長に再投資するための重要な見落とし機会を発見できることがよくあります。
📚 参考資料
本記事の内容は、香港政府の公式資料および信頼できる情報源に基づいて作成されています:
- 香港税務局(IRD)事業所得税ガイド – 税率、控除ルール、源泉地主義の詳細
- 香港税務局(IRD)R&D税額控除ガイド – 研究開発控除の要件と申請方法
- 《税務条例》(第112章) – 事業所得税に関する基本法規
- 香港政府ポータル – 香港特別行政区政府公式サイト
最終更新:2024年12月 | 本記事の情報は一般的な参考情報であり、具体的な問題については資格を持つ税務専門家にご相談ください。