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香港の非居住者取締役向けeTAX:コンプライアンスの簡素化

📋 ポイント早見

  • 非居住者取締役の定義: 単一課税年度で180日未満、または連続2年度で300日未満の滞在。
  • 給与所得税(2024/25年度): 累進税率(2%〜17%)または標準税率(500万香港ドル以下は15%、超過分は16%)のいずれか低い方。
  • 事業所得税(利得税): 法人は最初の200万香港ドルが8.25%、超過分は16.5%。
  • 基礎控除額(2024/25年度): 単身者で132,000香港ドル。
  • 電子申告の特典: 自動的に1ヶ月の申告期限延長(7月2日まで)。
  • 雇用主申告(IR56B): 2024年4月1日より電子申告が義務化。
  • 記録保存期間: 税務関連書類は最低7年間。
  • 60日ルール: 滞在60日以下でサービスが香港外で提供された場合、免税の可能性あり(取締役報酬には適用されにくい)。

海外から香港会社の取締役を務めている方、税務申告をどのように進めれば良いかお悩みではありませんか?香港の洗練されたeTAXポータルを活用すれば、非居住者であっても税務義務の管理はかつてないほど簡素化されています。本ガイドでは、2024-2025年度における非居住者取締役としての香港税務申告に必要なすべての情報と、デジタル税務行政の力を活用する方法を詳しくご説明します。

香港における非居住者取締役のステータスを理解する

非居住者取締役の定義

香港における税務上の居住者(Resident)か非居住者(Non-Resident)かは、単なる住所ではなく、香港との結びつきを評価する特定のテストによって決定されます。税務局(IRD)は、以下のいずれかの条件を満たす場合、税務上の居住者とみなします。

  • 通常居住地テスト: 習慣的な居住地が香港である。
  • 180日ルール: 課税年度(4月1日〜3月31日)中に香港に180日を超えて滞在する。
  • 300日ルール: 連続する2つの課税年度(当該年度を含む)で、香港に300日を超えて滞在する。

これらのいずれのテストも満たさない場合、非居住者とみなされます。しかし、これは香港源泉所得、特に取締役報酬に対する香港の課税から自動的に免除されるわけではありません。

源泉地主義による課税

香港は源泉地主義(Territorial Basis)を採用しており、居住者・非居住者を問わず、すべての個人が以下の所得に対して香港の給与所得税(薪俸税)の対象となります。

  1. 香港源泉の雇用所得
  2. 香港における役職(取締役職を含む)からの所得
  3. 香港の年金からの所得
⚠️ 重要な注意: 非居住者取締役の場合、香港会社の取締役会に参加することによる報酬は、サービスがどこで提供され、支払いがどこで受け取られたかに関わらず、原則として香港の給与所得税の課税対象となります。

60日免税ルール

限定的な免税規定として、課税年度中に香港に60日以下しか滞在せず、かつ 提供したサービスがすべて香港外で行われた場合、免税となる可能性があります。しかし、香港会社の取締役職は香港における役職とみなされるため、このルールが取締役報酬に適用されることは稀です。

eTAXポータル:コンプライアンスへのデジタルゲートウェイ

非居住者向けeTAXサービスの概要

税務局のeTAXポータルは大幅にアップグレードされ、非居住者の申告者にとって非常に使いやすいものとなっています。主な機能は以下の通りです。

  • 24時間・グローバルアクセス: 世界中どこからでも申告可能。
  • 自動延長: 電子申告により申告期限が自動的に1ヶ月延長(個人申告書は6月2日→7月2日)。
  • リアルタイム税額計算: システムが自動的に納税額を計算。
  • 安全な送信: 暗号化通信により機密データを保護。
  • 即時確認: 申告書提出後、即座に受領確認。
  • 書類アップロード: 証明書類(PDF/JPG形式)を電子提出可能。
  • 支払い統合: 様々なオンライン決済方法で納税可能。
  • ステータス追跡: 申告書や税務局からの通信の進捗状況を確認可能。

個人税務ポータルへのアクセス

非居住者取締役は、主に個人税務ポータル(https://itp.etax.ird.gov.hk)を利用して給与所得税申告書(BIR60)を提出します。アクセスには以下が必要です。

  • 納税者番号(Tax File Number)
  • 香港身分証番号またはパスポート番号
  • 通知用の有効なメールアドレス
  • 固有のログイン資格情報(初回登録で取得)
💡 専門家のヒント: 初めて利用する方は、基本情報を提供してアカウント登録が必要です。税務局が本人確認を求める場合があるため、申告期限の十分前にこのプロセスを開始しましょう。

非居住者取締役の税務義務

個人税務申告書(BIR60)

BIR60は、給与、個人所有不動産の賃貸収入、個人事業の利益を報告するために個人納税者に発行されます。非居住者取締役にとっては、主に取締役報酬の報告が中心となります。

項目 詳細(2024/25年度)
課税年度 4月1日〜3月31日(例:2024/25年度は2024年4月1日〜2025年3月31日)
申告書発送日 毎年5月初旬頃(例:5月2日頃)
紙での申告期限 発送日から約1ヶ月後(例:6月2日)
電子申告期限 紙の期限から1ヶ月延長(例:7月2日)

雇用主の申告義務(IR56B)

取締役が個人税務申告書(BIR60)を提出する一方で、非居住者取締役を雇用する香港会社は、雇用主申告書(BIR56AおよびIR56シリーズ)を通じて報告義務を遵守しなければなりません。

⚠️ 2024-2025年度の重要な更新: 2024年4月1日より、税務局はストレージデバイス(USB等)によるIR56Bの提出を受け付けなくなりました。すべての記録は「雇用主申告電子申告サービス」を通じて提出する必要があります。

非居住者取締役に影響する主な更新点:

  • 電子申告の義務化: すべてのIR56B提出はオンライン電子申告を通じて行う。
  • 容量の拡大: IR56電子申告ツールは、1ファイルあたり800件から2,000件の記録に対応し、1回の提出で最大5,000件まで可能。
  • 取締役報告の閾値: 他の課税対象所得がある可能性がある取締役は、支払額に関わらずIR56Bに含める必要がある。
  • 提出期限: BIR56A発行日から1ヶ月以内(通常4月1日頃)。

これは、香港会社が非居住者取締役のすべての報酬(報酬、給与、ボーナス、現物給付、その他の補償を含む)を、支払いや受取の場所に関わらず報告しなければならないことを意味します。

2024/25年度の香港税率を理解する

給与所得税の計算方法

香港の給与所得税は2つの方法で計算され、税務局は自動的に納税額が低くなる方を適用します。

方法1:累進税率

課税対象所得 税率 該当区分の税額
最初の50,000香港ドル 2% 1,000香港ドル
次の50,000香港ドル 6% 3,000香港ドル
次の50,000香港ドル 10% 5,000香港ドル
次の50,000香港ドル 14% 7,000香港ドル
残額 17% 200,000香港ドル超過分の17%

方法2:標準税率(2024/25年度より二段階制)

  • 課税対象所得の最初の500万香港ドル: 15%
  • 課税対象所得が500万香港ドルを超える部分: 16%

「課税対象所得」は総所得から控除額を差し引いた金額、「課税対象所得」は総所得から控除額のみを差し引いた金額(個人控除は差し引かない)です。

利用可能な控除と控除額

非居住者取締役も、納税額を減らすために特定の控除額や控除を申請できます。

控除額/控除の種類 金額(2024/25年度)
基礎控除(単身者) 132,000香港ドル
配偶者控除 264,000香港ドル
子女控除(1人あたり) 130,000香港ドル
子女控除(出生年度) 追加130,000香港ドル
扶養親族控除(60歳以上) 親1人あたり50,000香港ドル
強制積立金(MPF)拠出金 実際の拠出額(年間上限18,000香港ドル)
自己教育費 上限100,000香港ドル(控除)
💡 専門家のヒント: 一部の控除額は、居住ステータスや家族関係によって適用資格が異なる場合があります。非居住者として正当に申請できる控除額を確定するためには、税務専門家に相談することをお勧めします。

事業所得税(取締役兼株主向け)

香港会社から利益配当も受け取る取締役は、二段階制の事業所得税(利得税)制度を認識しておく必要があります。

事業形態 最初の200万香港ドル 200万香港ドル超過分
法人 8.25% 16.5%
非法人事業 7.5% 15%

なお、香港にはキャピタルゲイン税、配当課税、利子所得に対する源泉徴収税はありません。これはビジネスを行う上で魅力的な特徴です。

非居住者取締役のためのeTAX申告ステップバイステップガイド

eTAX提出の準備

eTAXポータルにログインする前に、以下の重要な書類を準備しましょう。

  1. 身分証明書: 香港身分証またはパスポートの詳細
  2. 所得記録: すべての取締役報酬、給与、ボーナス、給付の詳細
  3. IR56Bフォーム: 香港会社の雇用主から発行されたIR56Bのコピー
  4. 控除の証拠: MPF拠出明細、自己教育費の領収書、慈善寄付の領収書
  5. 扶養家族情報: 控除額を申請する場合の配偶者、子供、扶養親族の詳細
  6. 銀行口座情報: 還付金受け取りまたは納税手配用
  7. 前年度の申告書: 参考のための過去の税務申告書

個人税務ポータルを通じた申告プロセス

  1. ステップ1:アクセスとログイン
    https://itp.etax.ird.gov.hk にアクセスし、ログイン資格情報を入力します。二段階認証が有効な場合は本人確認を行います。
  2. ステップ2:適切な税務申告書を選択
    該当する課税年度(例:2024/25)のBIR60フォームを選択し、個人情報が正しいことを確認します。
  3. ステップ3:所得を報告
    申告書の第4部に雇用所得の詳細を入力します。給与と取締役報酬は別々に報告し、すべての現物給付を含めます。
  4. ステップ4:控除額と控除を申請
    適用可能な個人控除額を選択し、控除対象経費を入力します。証明書類はPDFまたはJPG形式でアップロードします。
  5. ステップ5:自動税額計算を確認
    システムが自動的に納税額を計算します。累進税率と標準税率の両方の計算結果を確認しましょう。
  6. ステップ6:提出と確認
    すべての情報の正確性を確認し、電子申告書を提出します。参照番号付きの提出受領確認書を保存します。
  7. ステップ7:納税(納税額がある場合)
    税務局からの納税通知書(通常、申告後3〜6ヶ月)を待ち、記載された期限(通常2回分割)までに納税します。

二重課税の軽減と税務計画

租税条約(DTA)の理解

非居住者取締役として、同じ所得に対して居住国と香港の両方で課税される可能性があります。香港は45以上の国・地域と包括的租税条約を締結しており、以下の方法で二重課税を軽減します。

  • 外国税額控除: 香港で支払った税金を居住国の納税額から差し引く。
  • 免税方式: 特定の所得を一方の管轄区域で免税とする。
  • 軽減税率: 特定の所得タイプに対する源泉徴収税率を引き下げる。
  • 居住者判定ルール: 両方の管轄区域で居住者とみなされる場合の税務上の居住地を明確化する。

租税条約の恩典を申請するには、通常、居住国の税務当局発行の「居住者証明書」を取得し、関連する申請書類とともに香港税務局に提出する必要があります。

非居住者取締役のための税務計画戦略

合法的な税務計画により、コンプライアンスを維持しながら全体的な税負担を最小化できます。

  1. 報酬の効率的な構成: 両国での税務上の影響を考慮し、取締役報酬、給与、配当の組み合わせを検討する。
  2. 所得のタイミング: 控除額や控除を課税年度間で最適化するために、所得が支払われる時期を戦略的に計画する。
  3. 控除の最大化: MPF拠出金や適格経費を含む、すべての適用可能な控除を確実に申請する。
  4. 租税条約の活用: 利用可能な条約上の恩典を理解し、活用して二重課税を回避する。
  5. すべてを文書化: 自身の税務上の立場と租税条約の申請を裏付ける包括的な記録を維持する。
  6. 定期的なコンプライアンスレビュー: 専門家と定期的に税務構造を見直す。

コンプライアンス要件と記録保存

必須の記録保存

税務局は、納税者に対し、最低7年間の適切な記録保存を義務付けています。非居住者取締役は以下を保存する必要があります。

  • すべての税務申告書および関連明細書
  • 納税通知書

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