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香港における賃貸収入に対する不動産税の計算方法:ステップバイステップ解説

📋 ポイント早見

  • 税率: 純課税評価額に対して一律15%(2008/09年度以降変更なし)
  • 法定控除: 修繕・経費に対する自動20%控除(実際の支出額に関わらず)
  • 実効税率: 20%控除後の総賃貸収入に対する実効税率は12%(15% × 80%)
  • 課税年度: 4月1日から3月31日(2024/25年度:2024年4月1日~2025年3月31日)
  • 納税義務者: 香港の不動産から賃貸収入を得るすべての所有者(居住者・非居住者問わず)
  • 納付スケジュール: 年2回分割納付(通常11月と4月)
  • 代替オプション: 個人の不動産所有者は「個人課税」の選択が可能

香港で不動産を所有し、賃貸収入を得ている方々にとって、毎年どれだけの税金を支払う必要があるのかは重要な関心事です。香港の不動産税(物業税)制度は、そのシンプルさと予測可能性で世界的に知られています。本記事では、2024-2025年度の最新情報に基づき、香港の賃貸収入に対する不動産税の計算方法を、具体的な例を交えながらステップ・バイ・ステップで詳しく解説します。

香港の不動産税(物業税):シンプルな一律15%制度

香港の不動産税制度は、複雑な累進課税を採用する多くの国・地域とは異なり、純課税評価額に対して一律15%の税率を適用するシンプルな構造です。この税率は2008/09年度以降変更されておらず、不動産投資家や所有者にとって安定した税負担を提供しています。この制度は、香港に所在し賃貸収入を生み出す不動産の所有者であれば、居住者・海外投資家・個人・法人を問わず、すべてに平等に適用されます。

⚠️ 重要な注意: 不動産税は、短期賃貸(Airbnb)、商業用リース、住宅賃貸、さらには権利金(リース・プレミアム)を含む、香港の不動産から得られるすべての賃貸収入に適用されます。唯一の例外は、課税期間中に空室で収入が全く発生しなかった場合のみです。

不動産税の3ステップ計算方法

不動産税の計算は、以下の3つのシンプルなステップに分けられます。2024/25年度の納税額を正確に把握するために、各ステップを詳しく見ていきましょう。

ステップ1:課税評価額(Assessable Value)を算出する

課税評価額は、不動産税計算の基礎となる金額です。これは、課税年度(2024年4月1日~2025年3月31日)中に、不動産の使用権を付与する対価として受け取るすべての収入を指します。

課税評価額に含まれるもの 総額から控除できるもの
賃貸収入: 課税年度中に支払われた、または支払われるべきすべての家賃 所有者が支払った差餉: テナントに代わって所有者が支払った政府の差餉
権利金(リース・プレミアム): 賃貸借契約締結のための一括支払い(按分計算) 回収不能家賃: 回収不能であることが証明された家賃
その他の利益: 不動産の使用に関連するあらゆる支払い・利益 この段階では上記以外の控除は認められない

課税評価額の計算式:
課税評価額 = (賃貸収入 + 按分された権利金) – 所有者が支払った差餉 – 回収不能家賃

💡 専門家のヒント: すべての家賃の支払記録、賃貸借契約書、差餉の支払い記録を詳細に保管してください。香港税務局(IRD)はこれらの記録を7年間保存することを義務付けており、適切な書類管理は確定申告を格段に容易にします。

ステップ2:純課税評価額(Net Assessable Value)を計算する

ここが香港の不動産税制度の特徴的な部分です。課税評価額を算出した後、実際の支出額に関わらず、修繕費および経費として自動的に20%を控除します。この法定控除は、制度の中で最も価値のある特徴の一つです。

純課税評価額の計算式:
純課税評価額 = 課税評価額 × 80%
(または:純課税評価額 = 課税評価額 – (課税評価額 × 20%))

⚠️ 重要な制限: 20%の法定控除は、不動産関連経費に対する唯一の控除です。以下の項目を別途控除することはできません:

  • 政府地租(差餉とは異なります)
  • 内装・リフォーム費用
  • 不動産管理費
  • 保険料
  • 住宅ローン利息
  • 法律相談費や不動産仲介手数料

20%の控除は、これらすべての経費をまとめてカバーするように設計されています。

ステップ3:15%の税率を適用する

最後のステップは非常にシンプルです。純課税評価額に香港の標準不動産税率である15%を乗じます。

納付すべき不動産税の計算式:
納付すべき不動産税 = 純課税評価額 × 15%

簡略化した総合計算式:
不動産税 = [(賃貸収入 – 回収不能家賃 – 所有者が支払った差餉) × 80%] × 15%
これは以下のように簡略化できます:
不動産税 = (賃貸収入 – 回収不能家賃 – 所有者が支払った差餉) × 12%

実例による計算(2024/25年度)

例1:標準的な住宅賃貸

陳さんはミッドレベルズに住宅用アパートを所有しており、2024年4月1日から2025年3月31日までの状況は以下の通りです。

  1. ステップ1 – 課税評価額:
    月額家賃:30,000香港ドル × 12ヶ月 = 360,000香港ドル
    所有者が支払った差餉を控除:12,000香港ドル
    課税評価額 = 348,000香港ドル
  2. ステップ2 – 純課税評価額:
    348,000香港ドル × 80% = 278,400香港ドル
    (20%法定控除額 = 69,600香港ドル)
  3. ステップ3 – 納付すべき不動産税:
    278,400香港ドル × 15% = 41,760香港ドル
💡 重要な洞察: 陳さんの総賃貸収入に対する実効税率は、15%ではなくわずか約11.6%(41,760香港ドル ÷ 360,000香港ドル)です。これは20%の法定控除と彼が支払った差餉によるものです。実際には管理費や修繕費として45,000香港ドルを支出したとしても、標準的な69,600香港ドルの控除が適用され、彼にとって有利に働いています。

例2:権利金付き商業用不動産

李さんは尖沙咀に商業用不動産を所有しており、2024年7月1日から始まる2年間のリース契約を結んでいます。

  1. 権利金の按分計算:
    権利金120,000香港ドル ÷ 24ヶ月 = 月額5,000香港ドル
    2024/25年度に該当する9ヶ月分(2024年7月~2025年3月)= 45,000香港ドル
  2. 課税評価額:
    賃貸収入:25,000香港ドル × 9ヶ月 = 225,000香港ドル
    権利金を加算:45,000香港ドル
    総課税評価額 = 270,000香港ドル
  3. 純課税評価額:
    270,000香港ドル × 80% = 216,000香港ドル
  4. 納付すべき不動産税:
    216,000香港ドル × 15% = 32,400香港ドル

法人と個人の不動産所有者:重要な違い

法人の不動産所有者:事業所得税(利得税)による免税申請

香港の法人を通じて事業を営み、賃貸不動産を所有している場合、重要な選択肢があります。それは、不動産税の免税を申請できる可能性があることです。これは、事業、専門職、または商業活動を行う法人が得る賃貸収入は、すでに事業所得税(利得税)の課税対象となる可能性があるためです。

なぜこれを検討するのか? 二重課税を避けるためです。もし賃貸収入が事業所得税(最初の200万香港ドルは8.25%、超過分は16.5%)の対象となるのであれば、同じ収入に対して不動産税も支払うべきではありません。法人は、税務局に対して正式にこの免税を申請する必要があります。

個人の不動産所有者:個人課税(Personal Assessment)の選択

個人の不動産所有者には、強力な代替案があります。それが「個人課税」を選択することです。このオプションでは、賃貸収入がその他の収入源(給与、事業所得)と合算され、香港の累進的な給与所得税(薪俸税)の税率に基づいて課税されます。

個人課税のメリット 不動産税の制限
累進税率(2%〜17%)の適用が可能 一律15%の税率のみ
幅広い控除が利用可能(慈善寄付、住宅ローン利息など) 20%の法定控除のみ
個人控除の適用(基礎控除、配偶者控除、子女控除など) 個人控除は適用されない
毎年の税額控除の対象となる 税額控除の対象外
⚠️ 重要な決定: 不動産税と個人課税のどちらかを選択しなければならず、同じ収入に対して両方を併用することはできません。この選択は、確定申告書とともにIR76Aフォームを提出することで行います。多くの不動産所有者は、自身の総合的な財務状況に基づいてどちらのオプションがより節税になるかを判断するため、税務専門家に相談します。

コンプライアンスのタイムラインと納付スケジュール

香港の不動産税に関する要件を遵守するためには、以下のタイムラインを理解することが重要です。

  1. 2025年5月: 税務局から不動産税申告書(IR6120フォーム)が送付される
  2. 2025年6月上旬: 送付日から約1ヶ月以内に申告書を提出
  3. 2025年11月: 第1回分割納付(2025/26年度の暫定税)
  4. 2026年4月: 第2回分割納付(2024/25年度の確定税 + 追加の暫定税)
⚠️ ペナルティ警告: 申告または納付の遅延は、以下の結果を招く可能性があります:

  • 納期限後の未納税額に対して5%の追加賦課金
  • 継続的な滞納に対する追加罰則
  • 延滞利息(2025年7月より年率8.25%)
  • 重大な脱税事件に対する起訴

税務局は、最大6年間(詐欺の場合は10年間)の遡及課税を行うことができます。

特別なシナリオとよくある質問

短期賃貸(Airbnb/VRBO)

はい、短期賃貸収入も同じ計算方法で不動産税の課税対象となります。ただし、短期賃貸は、香港の家主・テナント法や建物管理規則の下で追加の規制上の考慮事項に直面する可能性があることに注意してください。

非居住者の不動産所有者

不動産税の計算は、居住者と非居住者の所有者に等しく適用されます。ただし、非居住者は、申告や税務局との連絡を処理するために、現地の税務代理人を任命することを検討すべきです。

複数の不動産を所有する場合

複数の不動産を所有している場合、不動産税を計算する際には、香港にあるすべての不動産からの賃貸収入を合計する必要があります。各物件ごとに個別に計算するのではなく、総賃貸収入が重要となります。

まとめ

  • シンプルな15%税率: 香港の不動産税は純課税評価額に対して一律15%の税率を適用し、投資家に予測可能性を提供します。
  • 自動20%控除: 実際の支出額に関わらず、修繕・経費として20%の法定控除が受けられます。これは多くの場合、有利に働きます。
  • 実効12%税率: 20%控除後の総賃貸収入に対する実効税率はわずか12%です。
  • 法人の選択肢: 法人は、賃貸収入が事業所得税の対象となる場合、不動産税の免税を申請できます。
  • 個人課税の検討: 個人は「個人課税」の選択を評価すべきです。累進税率と追加控除により、大幅な節税が可能な場合があります。
  • 適時のコンプライアンス: 申告書は受領後1ヶ月以内に提出し、分割納付は期限までに支払い、ペナルティを回避しましょう。
  • 記録の保存: 賃貸借契約書、支払い領収書、差餉の支払い記録など詳細な記録を7年間保管してください。
  • 専門家への相談: 特に不動産税と個人課税のどちらを選択するか迷う場合は、税務専門家に相談することを検討しましょう。

香港の不動産税制度は、複雑な税制が蔓延る世界において、そのシンプルさと予測可能性で際立っています。経験豊富な不動産投資家であれ、初めての家主であれ、これらの計算方法を理解することは、情報に基づいた財務上の意思決定を行う力を与えてくれます。15%の税率と20%の控除が明確な枠組みを提供する一方で、特に不動産税と個人課税の選択は、個々の状況によって税負担に大きな影響を与える可能性があることを忘れないでください。疑問がある場合は、常に資格を持つ香港の税務専門家に相談し、あなたの具体的な状況に合わせたアドバイスを受けることをお勧めします。

📚 参考資料

本記事の内容は、香港政府の公式資料および信頼できる情報源に基づいて作成されています:

最終更新:2024年12月 | 本記事の情報は一般的な参考情報であり、具体的な問題については資格を持つ税務専門家にご相談ください。

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